「冷水浴が疲労回復や睡眠に良い」と言われますが、どれほど効果があるのか、どの方法がより良いのかはあまり知られていません。
そこで今回は、運動後の冷水浴がアスリートの睡眠と回復にどのように影響するのかを検証した注目の研究をご紹介。
フランスの研究チームによる論文の内容をもとに、冷水浴の深さが睡眠や回復に与える影響についてデータとともに解説します。
調査の概要
この論文は、全身(頭まで)と部分(腰まで)の冷水浴が、アスリートの睡眠構造や回復に与える影響を比較した実験研究です。
12名の持久系男性アスリートを対象とし、冷水浴の深さによる違いを評価しました。
この研究では、高強度のトレイルラン後に、頭まで浸かる全身冷水浴(WHOLE)、腰までの部分冷水浴(PARTIAL)、冷水浴なし(CONT)の3条件を比較し、体温変化・睡眠の質・心拍変動などが分析されました。
項目 | 内容 |
---|---|
タイトル | Effect of the Depth of Cold Water Immersion on Sleep Architecture and Recovery Among Well-Trained Male Endurance Runners (よく訓練された男性持久力ランナーにおける冷水浸漬の深さが睡眠構造と回復に及ぼす影響) |
著者・研究機関 | Maxime Chauvineau 他(INSEP:フランス国立スポーツ・パフォーマンス研究所) |
発表年 | 2021年 |
出典 | Frontiers in Sports and Active Living |
論文リンク | https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fspor.2021.659990/full |
主な調査結果
\調査結果をまとめると…/
- 全身冷水浴は、部分冷水浴や未実施に比べて「中途覚醒」や「手足の動き」を有意に減少
- 就寝直後3時間の「深い睡眠」割合が部分冷水浴よりも有意に増加
- 体感の回復感や「朝のすっきり感」が向上
- ただし、筋力・筋損傷指標の回復には有意な差なし
- 全身冷水浴では副交感神経活動がやや低下する傾向も
▶ 全身冷水浴は睡眠の質を高め、回復感を向上させる可能性が示唆されたが、筋ダメージの回復速度には差が見られなかった。

全身冷水浴(WHOLE)は部分冷水浴(PARTIAL)や対照条件(CONT)に比べて、
冷水浴直後から大きく深部体温を低下させており、その効果は約80分間持続していた。
睡眠の質への影響
全身冷水浴は、睡眠中の覚醒回数と手足の動きを大きく減らし、特に就寝直後の深い睡眠(SWS)を増加させました。
これは、疲労回復やホルモン分泌において重要な睡眠段階であり、回復に有利です。
心拍変動の変化
全身冷水浴では、睡眠中の副交感神経活動(RMSSDやHF)が低下していました。
これは強い冷却刺激により交感神経が優位になっていた可能性があり、運動直後に連日高負荷が続くようなケースでは注意が必要です。
回復指標の変化
筋力(MVIC)、ジャンプ力、筋ダメージ(CK)、筋肉痛、ストレスなどの回復には、3条件間で大きな差は見られませんでした。
主観的な「回復した感覚」は、冷水浴を行った方が高い傾向がありました。
結論
この論文は、全身冷水浴が睡眠の質を高める可能性があることを示しました。
特に、運動後の深部体温を大きく下げることで、睡眠初期の「深い眠り」を促進し、回復を助けると考えられます。
ただし、筋ダメージの回復には明確な差がなかったため、あくまで「睡眠と主観的回復感」にメリットがある手法と位置付けられます。
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