激しい筋トレの後、「水風呂に入ると疲労が取れる気がする」と感じたことはありませんか?
本記事では、冷水浴(CWI:Cold Water Immersion)が実際に筋力回復や循環機能に与える影響を、科学的に検証した研究を紹介します。
運動後のリカバリー手段として広く使われる「冷水浴」と「軽い運動(アクティブリカバリー)」の効果を比較したこの論文は、トップアスリートのトレーニング戦略にも通じる貴重な資料となるでしょう。
調査の概要
この論文は、抵抗運動(レジスタンストレーニング)後のリカバリー手法としての「冷水浴」と「軽いサイクリング」の生理学的効果を比較した実験研究です。
10人の若年男性被験者を対象とした、筋力、筋温、血行動態、酸素飽和度の変化を分析した結果です。
この研究では、ランダム化クロスオーバーデザイン※を用い、被験者に10分間の冷水浴または軽い運動を実施し、それぞれの生理的反応と筋力回復を比較しました。
※ランダム化クロスオーバーデザイン:同じ被験者が複数の介入(例:冷水浴と軽い運動)を順番に受けるが、その順番を無作為に決める研究方法。
項目 | 内容 |
---|---|
タイトル | Effects of cold water immersion and active recovery on hemodynamics and recovery of muscle strength following resistance exercise (冷水浸漬と能動回復が抵抗運動後の血行動態と筋力回復に及ぼす影響) |
著者・研究機関 | Llion A. Roberts ほか(クイーンズランド大学等) |
発表年 | 2015年 |
出典 | American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative and Comparative Physiology |
論文リンク | https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00151.2015 |
主な調査結果
\調査結果をまとめると…/
- 冷水浴後は心拍出量・筋温が低下し、筋力は維持された。
- 軽い運動後は筋温と血流が維持されたが、筋力が有意に低下した。
- 筋肉内の酸素供給と血流量の変化は、回復方法により異なったパターンを示した。
筋力回復の観点では「冷水浴」に軍配
冷水浴後、最大等尺性筋力(MVC)は維持されましたが、軽い運動後には5〜40分間で筋力が低下。
冷水浴により「筋疲労の感覚」が抑えられた可能性があります。
筋温と循環動態の違いが明確に
冷水浴では筋温が低下し、心拍出量も低下。
一方、軽い運動では筋温・心拍出量ともに高く維持され、代謝活動が継続していたと考えられます。
酸素飽和度の動態も対照的
冷水浴中は筋肉の酸素飽和度(SmO₂)は大きく変化しませんでしたが、軽い運動では運動による酸素消費によりSmO₂が減少しました。
冷水浴は末梢血管における循環量を増やす一方で、筋の酸素消費は抑えられていたことが示唆されます。

ACTでは筋の酸素消費が続き、CWIでは酸素飽和度が安定し血流も一時的に増加。
回復中の生理的反応が対照的に現れている。
結論
この論文は、レジスタンストレーニング後の回復における「冷水浴」と「軽い運動」の効果を明確に比較し、冷水浴が筋力を維持するのに有効である可能性を示しました。
冷水浴は、筋温と循環動態を低下させつつも、筋力の保持に寄与することが示唆されており、競技者の短期間リカバリー戦略として有効と考えられます。
ただし、冷水浴による循環低下が長期的な回復やトレーニング効果にどのような影響を及ぼすかについては、今後の研究が必要です。
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