サウナや水風呂の後に感じる「ふわっとした浮遊感」や「気持ちよさ」は、多くの人が“ととのい”のサインと捉えがちです。
しかしその感覚が、実は体調不良による“めまい”である場合もあることをご存じでしょうか。
近年は温冷交代浴によるリラクゼーション効果が注目される一方で、入り方を誤ると、めまいや失神などの体調トラブルを招くケースもある点には注意が必要です。
本記事では創業40年の『水風呂・チラードットコム』が、「ととのい」と「めまい」の違いや見分け方、そして安全にサウナを楽しむための正しい入り方と注意点を、科学的な知見に基づいてわかりやすく解説します。
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サウナ・水風呂で「気持ちいい」と「めまい」が同時に起こる理由

サウナで体を温めた後に水風呂で冷却する温冷交代浴は、自律神経のバランスを切り替え、深いリラックス状態をもたらすとされています。
その過程で生じる「浮遊感」や「心地よさ」は、いわゆる“ととのい”と呼ばれる感覚と重なる部分もあります。
しかし実際には、急激な温度変化によって血圧や自律神経が乱れ、一時的に脳への酸素供給が低下することで、「めまい」が生じている可能性もあります。
この「ふわっとした感覚」と「気持ちよさ」が重なることで、体調不良のサインを“ととのい”と誤認しやすくなる点には注意が必要です。
「めまい」はととのいじゃない!体調不良のサインです

めまいは、単なる快感とは異なり、体が発している異常のサインである場合があります。
特に以下のような症状がある場合は、注意が必要です。
- サウナ後や立ち上がった際にふらつきが続く
- 視界が真っ白になる
- 吐き気を感じる
- 意識が遠のくような感覚がある
これらの症状は、脱水や低血圧、脳への血流不足などによって引き起こされることがあり、無理をすれば失神や転倒のリスクにもつながります。
違和感を覚えた場合は、ただちに休息を取り、無理をしないよう心がけましょう。

サウナや水風呂でめまいが起こる原因

サウナや水風呂でめまいが起こるおもな原因は、以下の3つです。
- 急激な温度変化による血圧の乱れ
- 脱水状態による血流不足
- 高温環境による自律神経の過剰反応
それぞれについて、関連する研究論文のデータもあわせて解説します。
急激な温度変化による血圧の乱れ
サウナから水風呂への急な移動は、血圧や心拍に大きな負担をかけます。
特に温度差が激しいほど、体は急激に変化する環境に対応しようとして自律神経が乱れ、血圧が急低下します。
2023年カナダの医療機関によって行われた研究では、健康な中高年30名が85℃のサウナに10分間入った後、5℃の冷水に1分間入浴した際、血圧や脳の血流が大きく変動することが確認されました。
このような状態では、脳への血流が一時的に不足しやすく、結果として低血圧性のめまいが起きやすくなります。
また、冷水への急な浸かり方は「冷水ショック反応」と呼ばれる生理反応を引き起こし、呼吸が浅くなったり、心拍が急上昇したりすることもあるため注意が必要です。
脱水状態による血流不足
サウナでは大量の汗をかくため、体内の水分が失われ、血流が悪化しやすくなります。
1986年のフィンランドの研究では、80℃のサウナに1日2回、7日間入浴した被験者が、1回あたり平均0.7〜0.9kgの体重減少(=発汗)を記録。
血圧の低下や心拍数の上昇も見られました。
脱水が進むと脳への酸素供給が滞り、めまいやふらつきが起こりやすくなります。特に立ち上がったときのふらつきは要注意です。
汗で失う水分は700〜900ml程度とされており、吸収ロスも考慮すれば、サウナ前後でそれぞれ500ml以上の水分補給が推奨されます。
高温環境による自律神経の過剰反応
サウナは心身を整える場としての効果が期待されていますが、極端な高温環境では自律神経が過剰に刺激され、体調を崩すリスクが高まることがあります。
2024年にポーランドで行われた研究では、サウナを習慣的に利用していない女性大学生22名を対象に、80℃および120℃のサウナに20分間入浴する実験が実施されました。
その結果、80℃のサウナでは血圧の低下や心拍数の上昇が見られたものの、気分の改善(緊張・疲労・混乱の軽減、活力の向上)などポジティブな心理的効果が確認されました。
一方、120℃の高温サウナでは、
- 心拍数の急上昇
- 混乱・疲労感・気分の悪化
- 吐き気や意識の混濁
といった、自律神経の過剰反応による不調が顕著に現れ、一部の参加者には失神も観察されました。
この結果から、特にサウナに不慣れな人にとっては、極端な高温は体のストレスとなり、自律神経が乱れやすくなることが示されています。
正しいととのいのメカニズムを知ろう

「ととのい」とは、単なる気持ちよさではなく、脳と体が整った科学的に裏づけのあるリラクゼーション状態であることが、近年の研究によって明らかになっています。
2023年に発表された研究では、被験者がサウナ → 水風呂 → 休憩を3セット繰り返すフェーズにおいて、脳波・認知・感情の変化を詳細に測定しました。
▶ 脳波の変化
外気浴中、θ波・α波という脳波が増加。
→これらは「リラックス状態」「内省的に静かに集中している状態」に関連する、瞑想や安静時にもよく見られる波です。
▶ 認知機能の変化
P300(集中力や思考資源を測る指標)は減少。
MMN(無意識に反応する力を測る指標)は増加。
→「無駄に考えず感覚が研ぎ澄まされている状態」に近いと解釈できます。
▶ 主観的な感情の変化
参加者は、リラックス感・幸福感・頭が冴える感覚が増したと回答。
→これらの感覚と脳波の変化には明確な相関が見られました。
ととのいとめまいの違いを見分けるポイント
本物の“ととのい”と、危険な“めまい”を見分けるには、意識・気分・持続時間の3つをチェックしてみましょう。
○ ととのい | × 危険なめまい | |
---|---|---|
意識 | はっきりしている | ぼんやり・遠のく |
気分 | 幸福感・安心感 | 不安・冷や汗 |
持続時間 | 数分で落ち着く | 長引く・繰り返す |
めまいが起きた状態でサウナ浴・水風呂を続けると、心臓に大きな負荷がかかったり、意識を失う恐れもあります。
少しでも「おかしいな」と感じたら、無理せず休憩を。体が発するサインを見逃さないことが大切です。
サウナ・水風呂でめまいを防ぐには?正しい入り方と注意点

サウナで“ととのい”を安全に得るためには、正しい順序と時間の使い方が重要です。
無理をせず、体にやさしい流れを意識しましょう。
- サウナ:10分以内を目安に入浴
- 水風呂:15~20℃の水温で30秒〜1分程度
- 外気浴(休憩):5〜10分ほど体を落ち着ける
※水分補給:セットごとに適切なタイミングでこまめに
このシンプルな3ステップ+水分補給を守るだけでも、めまいや失神といったリスクを大きく軽減できます。
ポイント①温冷交代は急激にしない
高温のサウナ(85℃以上)から、5℃前後の極端に冷たい水風呂にすぐ入ると、血圧や心拍数が急激に変化し、低血圧性のめまいや冷水ショックを起こす可能性があります。
温冷交代は、徐々に慣らすことが安全のポイントです。
ポイント②脱水状態で入らない
サウナではたった10分で700〜900mlの水分が失われるとされており、水分不足になると血液量が減少します。
結果として、脳への血流が不足し、立ちくらみやめまいが起きやすくなります。
- サウナ前後に200〜500mlずつの水分補給を意識
- アルコール摂取後や空腹時のサウナ利用は避ける(脱水+低血糖リスク)
しっかり水分を摂ることが、“ととのい”への近道です。
ポイント③高温サウナは短時間にする
前述した研究では、120℃の高温サウナに20分入ると、心拍数の過剰な上昇や血圧低下が起こり、自律神経のバランスが乱れて失神に至るケースもあることが示されています。
- 一般的には80〜90℃で10〜12分以内を目安に
- 初心者や体調が万全でない日は5〜8分程度でも十分効果的
「ととのいたい」気持ちが強くても、無理をせず、自分の体調と相談しながら楽しみましょう。
まとめ|気持ちいいと感じてもめまいは注意のサイン!

サウナと水風呂の心地よさは、自律神経のバランスが切り替わることで生まれる健全な反応です。
しかし、「ふらつき」や「視界のぐらつき」を伴うめまいは、体調不良の兆候である可能性があります。
安全に“ととのう”ためには、自分の体が発する小さな変化に気づくことが何より大切です。
心地よさを追い求めるあまり無理をせず、その日のコンディションに合わせて、賢くサウナを楽しみましょう。
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参考文献:
Montreal Heart Institute(カナダ)(2023年)「Hemodynamic Effects of Dry Sauna Followed by Cold Water Immersion in Healthy Subjects」
Wikipedia「Cold shock response」
J Leppäluoto 他(フィンランド)(1986年)「Some cardiovascular and metabolic effects of repeated sauna bathing」
Robert Podstawski 他(ポーランド)(2024年)「The influence of extreme thermal stress on the physiological and psychological characteristics of young women who sporadically use the sauna: practical implications for the safe use of the sauna」
Ming Chang 他(日本)(2023年)「A study on neural changes induced by sauna bathing: Neural basis of the “totonou” state」