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水風呂で持久力アップ|ミトコンドリアを増やす効果を示した最新研究

運動後に水風呂に入ると「疲労回復になる」とよく言われますが、実はそれだけではありません。

筋肉内のエネルギー工場である「ミトコンドリア」の量や働きが、水風呂によって高まる可能性があることが、オーストラリアの大学による研究で示されました。

この記事では、冷水浴が筋肉の代謝適応に与える影響について、科学的なデータをもとにわかりやすく解説します。

目次

調査の概要

この論文は、運動後の冷水浴がミトコンドリア※の増加(生合成)に与える影響を検証した研究です。

健康な若年男性8名を対象とした、4週間の持久系トレーニング+冷水浴による筋肉の変化に関する実験結果です。

この研究では、一方の脚だけを10℃の冷水に15分間浸けるという方法を用いて、冷水浴の効果を局所的に検証し、AMPK※・p38 MAPK※などの分子マーカーやミトコンドリア関連の酵素活性が分析されました。

ミトコンドリア:細胞内でエネルギー(ATP)を作る“発電所”のような働きを持つ小器官。
AMPK:エネルギー不足時に活性化し、脂肪燃焼やミトコンドリア生成を促す酵素。
p38 MAPK:運動や冷却などのストレスに反応し、細胞の修復やミトコンドリア生成を促す酵素。

項目内容
タイトルRegular postexercise cooling enhances mitochondrial biogenesis through AMPK and p38 MAPK in human skeletal muscle
(定期的な運動後の冷却は、AMPKとp38 MAPKを介してヒト骨格筋のミトコンドリア生合成を促進する)
著者・研究機関Mohammed Ihsan 他、Edith Cowan University(オーストラリア)
発表年2015年
出典American Journal of Physiology – Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
論文リンクhttps://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00031.2015?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org

主な調査結果

\調査結果をまとめると…/

4週間にわたる運動後の冷水浴により、AMPK・p38 MAPKの発現が上昇し、ミトコンドリア生成に関わるPGC-1αや呼吸鎖複合体タンパク質の増加が見られた。

冷水浴は、筋肉の持久的適応を高める可能性がある

冷水浴で増えるAMPKとp38 MAPK

AMPKとp38 MAPKは、運動刺激をきっかけに活性化されるシグナル分子で、ミトコンドリアの生合成を促進する重要なスイッチです。

本研究では、冷水浴を行った脚でこれらのタンパク質の増加が顕著であり、特にAMPKの活性化(リン酸化)も有意に上昇しました。

PGC-1αの増加とミトコンドリアタンパク質の変化

ミトコンドリア生成の司令塔ともいえるPGC-1αも、冷水浴によって増加傾向を示しました。

さらに、エネルギー産生に関わる呼吸鎖複合体(特にComplex I・III)のタンパク質量が増えたことも確認されています。

これにより、ミトコンドリアの「量的増加」が期待できる可能性があります。


冷水浴の効果は万能ではない?

一方で、すべてのミトコンドリア関連指標が改善されたわけではありません。

たとえば、エネルギー産生の要となるクエン酸合成酵素や脂肪酸代謝酵素の活性には明確な変化が見られませんでした。

冷水浴が「エネルギー効率」よりも「量的な適応」を主に促進する可能性が考えられます。

結論

この研究では、運動後に定期的に水風呂に入ることで、筋肉の中にあるミトコンドリアが増えやすくなる可能性があることがわかりました。

これは、体のエネルギー調整に関わる「AMPK」や「p38 MAPK」といった酵素が関係していると考えられます。

ただし、水風呂によって体のエネルギー効率や持久力がどれだけ向上するかについては、まだはっきりしていません。

水風呂を取り入れる際は、運動の強さやタイミングなどを工夫することが大切です。

※本ページの内容はページ内にあるソースの学術文献等を、一部翻訳機能等を活用して弊社にて独自に翻訳・要約したものです。詳細は参照元の文献をご参照ください。

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